経営計画を策定している企業ほど、将来を見据えた活動ができる
図1-3-24は経営計画を策定している企業(以下、策定企業)と経営計画を策定していない企業(以下、未策定企業)がどのような取り組みをしているかを示したものです。
その取り組みのうち、最も差が大きかったのが業務効率化(差が21.7)、ついで人材育成(16.7)、IT化投資(12.9)、研究開発(12.2)の順ででした。また、差が小さいのはアウトソーシング(5.7)、機械設備投資(4.7)となっています。差が小さいということは経営計画計画を策定していても、していなくてもある程度は取り組んでいるということですが、取り組んでいる内容は相当に異なると考えられます。
計画的に育成しなければ人材は育たない
最も多くの企業が取り組んでいるのが人材育成です。策定企業では75.1%が、未策定企業でも58.4%が何らかの形で人材育成に取り組んでいます。
しかし、未策定企業では企業の未来像を描いていないため「当社の必要とする人材像」が曖昧となり、目的のはっきりしない研修やセミナーへ参加するだけに留まるでしょう。しかしそれでは「人材」といえるほどの育成は困難です。会社全体の目的を明確にして計画的かつ継続的に人材育成を行わなければ企業の成長に役立つ「人材」にまで至らないからです。
かつて私が在籍していた外資系企業では、コストがかかるという理由で、ある時から十分な人材育成をおこなわなくなりました。その結果、新人や若手技術者の能力が極端に落ちていき、仕事を任せられる人材が枯渇していったことを覚えています。人材育成は単に取り組めばいいというものではなく、目標を定めて計画的に継続しなければ「人材」にならないことを痛感しました。
適切な研究開発投資こそ企業成長の原動力となる
上述した取り組みのうち、最も企業の取り組みが低いのが研究開発投資です。策定企業でも27.5%しか取り組んでおらず、未策定企業ではわずか15.3%しか研究開発投資に取り組んでいません。
研究開発投資は成功した場合と失敗した場合とでは極めて大きな差を生じることとなります。おそらく、策定企業と未策定企業とで、取り組みの差こそ12.2%ですが、成功確率及び研究開発の成果の質は大きく異なることでしょう。計画性がない開発行為は行き当たりばったりとなり、成功しても単発で終わることが多いからです。
適切な研究開発投資こそ企業成長の原動力となるため、長い目で見ると策定企業の業績は未策定企業の業績を大きく引き離すこととなるでしょう。