自社の強みは意識して自らを見つめ、顧客など外部から真剣に意見を聞き出すことで知ることができる
2017年度版の中小企業白書における新事業展開について見ていますが、アレ?と思うところがあります。
「新事業展開の成否別に見た、自社の強みの把握方法」では、「成功した企業」の割合が多かったのは以下の項目です。
- 社内での議論による自社の強みの洗い出し
- 他社との差別化に向けた分析
- 販売データ、口コミ等に基づいた評価の把握
一方、「成功していない企業」の割合が多かったのは以下の項目でした。(赤線で囲ってあるもの)
- 顧客・取引先へのヒアリング・アンケート調査等による評価の把握
- 他の経営者、知人からの評価の把握
- 公的支援期間、金融機関、コンサルタント等外部相談者による評価の把握
「成功した企業」の割合が多かったNo.1~3は主に自社内部での評価が中心でした。一方、「成功していない企業」の割合が多かったNo.4~6は主に外部からの評価が中心となっています。
この結果だけから見ると、外部からの評価はあまりあてにならない印象を受けます。つまり、「成功していない企業」は外部からの評価では「自社の強みがうまく把握できなかったために新事業展開に失敗した」と思っているということです。
しかし、一般的に自社の強みを社内だけでしっかりと把握することは困難です。自分自身を他社と客観的に比較することが難しいからです。
「成功していない企業」は自分自身で「自社の強み」について掘り下げて考えず、単に顧客や外部専門家に「うちの強みは何でしょうかね」と受身の姿勢で聞いたためこのような結果になったと思われます。
昨年放送されたドラマ「町工場の女」に似たようなシーンがありました。女社長が取引先に出向いて「うちの強みは何でしょうか?」と聞く場面です。聞かれた方は耳あたり良く「品質がよくて、なんでも早く仕上げてくれるから」みたいなことを言います。しかし、本音は「安い料金で、急な仕事でも特急で仕上げてくれて、小回りがきいて便利使いできるから」ということでしょう。このように、上辺のキレイ事で応えられると相手の真意がわからないことが多いものです。
自社の強みを知るためには意識して自らを見つめることが重要です。そして、当社をよく知る複数の外部関係者(顧客や仕入先、外部専門家等)から真剣に意見を聞き出して、その結果をよく分析しなければ本当の強みを見出すことができないのです。
次のコラムは”強みの活かし方は目標を立てることから始める”