A63F(ゲーム関連)の中でダントツに多いのがA63F7/00(小遊技動体たとえば,ボール,円盤,ブロックを用いる室内用ゲーム;パチンコ等)
2007~2016年の10年間で、FI記号で6番目に出願件数が多いのがA63F(ゲーム関連)です(図1参照)。A63Fはカードゲーム、盤上ゲーム、ルーレットゲーム、小遊技動体を用いる室内用ゲーム、ビデオゲームなど場は広くゲームに関する発明を含みます。
A63Fのなかでも一番出願件数が多いのがA63F7/00(室内用ゲーム;パチンコ等)であり、そのほとんどがパチンコ、スロットに関するものです。二番目がA63F5/00(ルーレットゲーム)、三番手がA63F13/00(ビデオゲーム)となります(図2参照)。
A63F7/00(パチンコ等)は2007年以降増加傾向だが、A63F13/00(ビデオゲーム)は横ばい
ここで、A63F7/00(室内用ゲーム;パチンコ等)とA63F13/00(ビデオゲーム)の出願推移を見てみると(図3参照)A63F7/00(室内用ゲーム;パチンコ等)の出願数が2007年から右肩上がりとなっていることがわかります。パチンコ業界は発明が盛んな業界だと言えそうです。
一方、A63F13/00(ビデオゲーム)は1000件~2000件の間で推移しており思ったよりも出願件数が少ない気がします。ビデオゲームとは、2次元以上の表示ができるディスプレイを用いた電子ゲームのことであり、いわゆるテレビゲーム、パソコンゲーム、スマホゲームなどを含みます。おそらく、この分野はG06F(電気的デジタルデータ処理)やG06N(コンピュータ・システム)などに分散しているために出願件数が少なめなのでしょう。
A63F7/00(室内用ゲーム;パチンコ等)の2017年の出願人は三洋物産、三共、大一商会などパチンコ、パチスロの製造メーカーとなります(図4参照)。また、A63F13/00(ビデオゲーム)の2014~2017年における出願人はグリー、コロプラ、コナミなどゲームメーカーが上位に来ます(図5参照)。これは当たり前の結果といえます。
ここで、A63F7/00(室内用ゲーム;パチンコ等)においてどのような発明が多いかを見てみました(図6)。そうすると、ゲームの内容に関係して光を放つ発明や光に関する構造に関わるものが多いことがわかります。また、ゲームの内容に関係して音が変わる発明や、不正防止、停電対策などの発明が見られます。確かに、パチンコは音や光でかなりうるさい印象がありますが、頑張って発明した結果なのですね。ただし、音や光以外には目立った点が見受けられませんでした。
機器の市場規模はスマホゲーム&アプリ市場のほうがおおきいが、産業全体ではパチンコ業界は依然としてガリバー
ここで市場の状況を見てみました。2016年の各機器の市場規模を見ると、スマホゲームアプリ市場が10,580億円、パチンコ・パチスロ機器市場が7,591億円、家庭用ゲーム機市場が4,412億円とスマホゲームアプリ市場が大きいことがわかります(図7)。ただし、これは機器のみの市場規模です。
一方、機器のみではなく実際の産業規模を見ると(図8)、パチンコ・パチスロ市場は約20兆円と、レジャー関連のなかで非常におおきい割合を占めることがわかります。これだけ見るとビデオゲーム業界よりも市場規模としては相当大きいと言えそうです。
今後の動向~パチンコ業界は全体的に衰退しており、今後の動向が注目される
しかし、パチンコホール店舗数と設置台数の推移(図9参照)から、パチンコ設置台数、パチスロ設置台数、ホール件数のすべてが減少傾向です。レジャー白書2018によると、パチンコは参加人口が前年比40万人減少して900万人となり、市場規模(貸玉料・貸メダル料)も前年比4.3%減少して19兆5,400億円となりました。パチンコ参加人口は、2017年についに1,000万人を割ってしまい、ピーク時と比べると3分の1以下にまで落ち込み、パチンコへの参加減少はさらに歯止めがきかない状況が続いています。
つまり、パチンコ業界は斜陽産業であり、年々機器の売り上げとサービス全体の売上が減っているのです。そこで、なんとか遊ぶ人を呼び戻そうと様々な取り組みをしており、その結果特許出願件数が大きく伸びたと言えそうです。しかし、2017年の特許出願件数は2016年に比べかなり減少しており、業界としても息切れ(開発疲れ)をしている可能性があります。
一方、 スマホゲームの市場規模は順調に増加しており(図10参照)、パチンコ屋に行くよりも家の中で遊ぶ人が増加していると言えそうです。ゲーム中で使える仮想通貨の進展やVR(仮想現実)ゲームの進歩もあり、今後もわざわざ外出してお金を使うより、家の中でお手軽に遊ぶ人が増えていきそうです。