特許情報の活用方法として、マーケティングツールとして使う方法があります。以下にA社を用いた事例を示します。

A社は主に自動車用にお部品(ギア・シャフト、カムシャフト、トランスミッションギアな)を製造しているメーカーです。
このA社が置かれた状況を特許情報を用いてみると次のことがわかります。

図1 A社の出願状況

A社の出願状況をみると、2000年ころにはピポット関連の出願が多かったのに、2014年ころからは差動伝動装置に関する特許出願が増えていることがわかります。おそらく自動車業界を取り巻く環境変化により、求められる部品も変化していることが伺えます。

上の図はFI記号という特許分類記号を縦軸にとっていますが、一番上の「作動伝動装置」に振られているFI記号の上位概念(伝動装置)をみると「作動伝動装置」に係る技術的な体系がわかります。(以下の図)

図2 技術的な体系

伝動装置という技術は、上図に示すように、大きく分けると個体型のものと液体型のものがあります。そして、両者に関係する技術として(機構の細部)と(伝動装置の制御)とが分類されています。

よりわかりやすく、表を図にすると以下のようになります。

図3 技術的な体系図

上図の中でA社が主に出願しているのが差動伝動装置の特許です。

より詳しく分析しないと確かなことは言えませんが、特許分類を見ると、個体型の電動装置のほうが分類が多いため、出願件数が多いことが推測されます。おそらく、個体型の伝動装置のほうが比較的古くから存在しているため累積の出願件数が多いのでしょう。

実際に2000~2017年の出願件数を見ると、個体型の伝動装置のほうが圧倒的に出願件数が多いことがわかります。

図4 各伝動装置の出願状況(2000~2017年)

このように、簡単な分析を行うだけでもA社を取り巻く技術状況を俯瞰することができるのです。