下請けからの脱却は自社独自商品の開発が必須

中小企業白書(2017年度版)で、シャワーヘッドの開発、製造及び販売を行う株式会社田中金属製作所が紹介されています。白書の記載を要約すると以下のようになります。

「同社の製品は、マイクロナノバブルを生成する装置が組み込まれ、美容作用や洗浄作用が期待できるとして人気がある。2003年頃まで、同社は下請として水栓バルブ部品の製造を行ってきたが、自社製品の開発と販路開拓の必要性を感じた。そこで、節水バルブとシャワーヘッドを自社で開発することとし、節水に加えて新たな付加価値としてマイクロナノバブルを発生するシャワーヘッド「アリアミスト ボリーナ27」の開発を進め、2011年に商品化にこぎ着けた。「節水しながら美しくなる」といった製品のコンセプトを明確にすることで、美容や健康志向に感度の高い30歳代の女性をターゲットとし、顧客からの認知度を高めている。社長は、中小企業の新製品開発やブランド戦略構築、販路開拓を支援する事業も拡大していきたいと考えている。」

 自社製品を作り出すプロセスが簡潔にまとめられていて、新製品開発とともにブランド戦略の重要性が印象づけられる内容でした。そこで、製品開発に当たり当社がどのような特許戦略を取ったかを簡単に見てみました。

技術軸を持ちながら開発することで競争力のある商品開発が可能となる

技術軸を持ちながら開発することで競争力のある商品開発が可能となるまず、シャワーに関する特許出願を調べると2005年以降に約1,000件もの特許出願がされていることがわかりました。かなりの数の特許出願がされているということは競争が激しい業界であるということができます。

特許出願人も、TOTO、LIXIL、パナソニックなど名だたる著名企業が出願人としてみられました。そのような中で当社は2005年以降の出願で10位と検討しています(LIXILとINAX、パナソニックと松下をまとめた場合)。

 中小企業があれこれと手がけることは力が分散するため大手企業に対抗することができません。むしろ一つの技術軸を持ちながら製品を開発することで競争力のある商品開発が可能となるのです。

特許情報を分析すると企業の強みを客観視できる

 特許情報を分析すると企業の強みを客観視できるさらに、「目的」と「構造・手段」にマトリクス化した各項目ごとに全体の特許出願中の当社特許出願の割合を見たのが以下の図です。

 当社の割合が多いものは、目的としては、「使い勝手、操作性』『節水』「美容、健康」となっており白書で紹介された商品開発に関連していることがわかります。そして、「付属品に特徴」「絞り部をそなえたもの」「空気混入」など様々な手段を使って目的を達成していることが推測できます。

特徴的なのは「節水」や「美容・健康」と言う目的のために「空気混入」という手段を活用した多くの特許を出願していることも見て取れることができ、マイクロバブル技術に特徴があることが示唆されています。

 このように、特許情報を活用することで会社の強みを客観的に見ることができ、特徴を把握することに役立てることができます。すなわち、自社の強みを正しく評価することが製品開発の第一歩なのです。当社は今後マイクロバブル技術を活かした様々な製品開発ができることでしょう。

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