特許情報から世の中の動きを把握し今後の戦略を考える

以前、「特許情報を鳥の目、虫の目、魚の目と様々に使い分けることで世の中がどの様に動いているかを様々な視点で見ることができる」と書きましたが、特許情報を活用して世の中をより広く見てみることにします。

FI記号以前話しをしたように、特許出願に付与されるFI記号はA~Hまであります。それぞれの記号が付与された特許出願の数を2000年から見てみると以下の図のようになります。

横軸が年(1月~12月)で、縦軸が特許出願件数です。一つの特許公報に複数の記号が付与されるため、記号の合計は実際の特許出願件数よりもかなり多くなります。

特許出願が多い分野は今後の成長が期待できる

出願傾向2000年から2016年までの流れを見てみると、一番多いのがGセクション(物理学)、次いでHセクション(電気)となります。さらに、Bセクション(処理操作、運輸)、Aセクション(生活必需品)、Cセクション(化学、冶金)と続きます。また、Eセクション(固定構造物)、Dセクション(繊維、紙)はかなり出願件数が低いことがわかります。

いずれの分野の特許出願も2000年以降右肩下がりで出願件数が減少していますが、これは、以下の理由によるものでしょう。

  • バブルが弾けて日本の景気が長期間低迷し、企業が研究開発に消極的になったこと
  • 単に数合わせのように特許を出願するのではなく、権利化を踏まえて厳選して特許を出願するようになったこと

人の生活に関わる分野は出願の縮小率が小さい傾向

出願比率2000年を100%とした場合の各分野の出願件数がどの様に推移していったかを見たのが以下の図です。

一番減少幅が小さいのがAセクション(生活必需品)でした。Aセクションには農業や食品関連の分野が含まれており、内需型の産業が多いため海外の景気の影響をそれほど受けないため特許出願の低下がそれほど大きくならなかったのかもしれません。次いで減少幅が小さかったのがFセクション(機械工学)です。機械も産業機械や汎用機械など様々な分野があるため景気変動の影響を受けづらいと言えそうです。

一方、特許出願件数の多かったGセクションやGセクションはかなり落ち込みが大きく、景気の影響を受けやすい産業であることが伺えます。なかでもEセクションは建築関連の産業であるために、公共工事の減少などによる影響をかなり受け、企業における研究開発が縮小していることがうかがえます。

今後は各セクションごとに詳細な動向を見ていこうと思います。

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